全国学力テストとは??

 最近さまざまな調査等で活用されている「全国学力テスト」が2017年4月18日に小学校6年生と中学校3年生を対象に行われました。この「全国学力テスト」は,毎年実施されています。

 教育や子どもに関わる情報として、「全国学力テスト」の名前を目にすることは増えましたが、その歴史や特性はあまり知られていません。そこで、今回は「全国学力テスト」の歴史や功罪など、より詳しいことを知っていただきたいと思います。

 

スクリーンショット 2017-06-30 11.15.06

 

 

「全国学力テスト」とは?

 「全国学力テスト」は、正式には「全国学力・学習状況調査」と言います。小学6年生と中学3年生を対象に、国語と算数・数学の2教科において実施されていて、各教科ごとに、「A問題」(「知識」に関する問題)、「B問題」(「活用」に関する問題)が出題されています。テストだけでなく、「学習状況」も調査します。生活習慣や学校環境に関する質問紙調査を子どもたちと学校に対して行います。

 

 

「全国学力テスト」の歴史

 この「全国学力テスト」は、2007年に「復活」しました。つまり、「全国学力テスト」は過去にも実施されていたのです。最初の全国調査は、1956年に実施されました。その背景には、「戦後の子どもたちの学力は低下したか?」という論争があったのです。1960年代に入っても全国調査は実施され、この全国調査により学力の地域間格差があることがわかりました。つまり、都市部の子どもたちの学力が高く、田舎の子どもたちの学力が低いという、都市部と田舎の子どもたちの間で学力格差があったのです。これは「都鄙(とひ)格差」と呼ばれています。しかし、1964年に競争激化の弊害や教職員からの反対運動からこの全国調査は中止となってしまいました。その後長い時を経て、2007年、43年ぶりに「全国学力テスト」が「復活」したわけです。ところで、どうしてこの時期に「復活」したかみなさんは知っていますか?

 それまで、「復活」しなかった理由は「全国学力テスト」への反対もありますが、もう一つ考えられるのは、学力形成にたいした注目がなされなかったことや、日本の教育が上手く機能していたというものがあります。しかし、国際的な学力調査であるPISA調査の結果が発表され、第一回から第二回にかけて日本の順位が大きく落ちていることがわかると、当時の文科省大臣中山成彬が全国学力テストの実施という方針を打ち出したのです。PISA調査は、第一回が2000年、第二回が2003年に実施され、その結果をもとに日本では2005年、2006年と「全国学力テスト」に関する制度が整えられ、2007年の実施に至りました。

 

スクリーンショット 2017-06-30 11.19.19

 

 

どのように行われているか?

 全国学力テストは、「復活」した2007年から2009年までは対象学年全員に行われる悉皆(しっかい)調査でした。ただし、愛知県の犬山市が「全国学力テストへの参加が、競争原理導入し、地域での独自の教育の取り組みを無化すること」などを理由に、参加を拒否しました。しかし2009年には犬山市も参加し、文字通り悉皆調査となりました。その後2010年度からは全体の3割を抽出する方法及び抽出対象校以外は希望により、調査利用ができる希望利用方式へと変化しました。政権交代を経て、当時の民主党が地域ごと、学校ごとの競争(競争主義)や序列化を煽る危険性、コストがかかりすぎるなどの問題点があると判断したためです。そして、2013年は、以下の年表に記述しているように、きめ細かい調査が行われました。続く2014年度から自民党政権に戻ったことから、再び悉皆調査となりました。

 

2007 「全国学力テスト」スタート。悉皆調査。
2008 悉皆調査
2009
2010 抽出調査及び希望利用方式

※2011年は、東日本大震災の影響等を考慮し、調査としての実施を見送り、希望する学校等に対して問題冊子等を配布。

2011
2012
2013 きめ細かい調査

(対象学年の全児童生徒を対象とした本体調査により、すべての市町村・学校等の状況を把握するとともに、1. 経年変化分析、2. 経済的な面も含めた家庭状況と学力等の状況の把握・分析、3. 少人数学級等の教育施策の検証・改善に資する追加調査等を新たに実施)

2014年~ 悉皆調査

 

成績トップの県

全国学力テストの結果、注目を浴びたのが秋田県です。かつては最下位にいた秋田県が学力のトップクラスの県となりました。

1950~60年代には全国調査により、「都鄙格差」が明らかになりました。しかし、高度経済成長を経て、田舎の生活環境が良くなり、都会の「つながり」弱まっている中で、「全国学力テスト」により、「田舎」の秋田県がトップになったのです。志水(2010)によると、この背景には、「離婚率」、「持ち家率」、「不登校率」が関係しているとされています。これらはそれぞれ、家族とのつながり、地域とのつながり、学校とのつながりという形で子どもの学力を支えています。秋田県が学力テスト1位の背景には、このような「つながり」があると考えられています。「都鄙格差」から、「つながり」の格差が明らかになったのです。

 

 

「全国学力テスト」の功罪

 全国学力テスト賛同者は、子どもの学力を客観的、継続的に把握し、指導に生かすことができると主張しています。

 しかし、以下のような問題点も挙げられます。

 

①学校間、地域間の過度な競争を助長する危険性

 点数によって学校の「評価」が決められることもあります。高い成績の学校には多くの生徒集まりますが、その人気校に入るための競争が激化することも考えられます。また、成績のあまりよくない学校は生徒が集まらず、学校間格差が広がることも考えられます。

 

②社会経済的な条件や教師たちの「がんばり」を考慮していない

 社会経済的に厳しい地域では、教師たちは子どもたちの学力を上げようと「がんばって」いますが、結果に表れないこともあります。それを、その地域の社会経済的背景を見ずに、「教師ががんばっていないからだ」という教師批判につながることも考えられます。

 以上のことから、「全国学力テスト」の問題点を念頭におきながら、その点数だけにとらわれるのではなく、「全国学力テスト」によって、子どもたちに必要な指導法などを考えていく必要があります。

 

引用・参考文献

文部科学省HP http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/

(2017/6/25 アクセス可)

酒井朗・多賀太・中村高康編著,2012『よくわかる教育社会学』ミネルヴァ書房

http://amzn.to/2sR2AOB

志水宏吉,2014『「つながり格差」が学力格差を生む』亜紀書房

http://amzn.to/2ton7v9

志水宏吉,2010『学校にできること -一人称の教育社会学』角川学芸出版

http://amzn.to/2shgCtY

志水宏吉,2009『全国学力テスト -その功罪を問う』岩波書店

http://amzn.to/2slYzhw

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA